短いですが、すごく久しぶりに文章を書いたので良かったら読んであげてください。#よはなよ∞ …………………………………口にはできない「なんだよ、こんな終わり方」「つまらんかったな」オレはこういう話は好きじゃない。流行ってるからって観たけど、こんなに後味の悪い話だとは思わなかった。ラブストーリーってのは、こうじゃいかん。もっと、ドキドキして、キラキラして、幸せな気持ちになるようなのじゃないと。洋平からの返事はなかった。洋平はまだエンドロールを眺めていた。テレビの画面がビカビカ不規則に反射して、洋平の顔を青白く照らしていた。頬を流れる水が少し光っていた。洋平は泣いていた。全然、なんでもないみたいな顔で、黙って泣いてた。続きを読む洋平、泣いてる。オレはそのとき、なんだか動けなかった。「確かにつまんなかった。ありきたりすぎ」洋平がやっとこっちを向いて、眠そうに笑った。じっと見ていたら、洋平は長袖を引っ張って適当に涙を拭った。「洋平、なんで泣いてんだ」洋平はすぐに返事をしなかった。「カンドーした…?」全然、あくびって感じじゃなかった。「いや、つまんなかったって。でもこの曲はいいな」洋平はそう言いながら、横目でこっちを見て笑った。「ま〜花道には早かったかもね」馬鹿にされているのはわかったから、一回頭突きはしておいたが、それ以上何か言う気にもなれなかった。その晩、オレは中々寝つけなかった。こんなに長く一緒にいるのに、洋平がこんなふうに、本当に泣いてるところを今まで見たことがなかった。そのことに初めて気がついたからだ。センチメンタルをやるのはいつだって、オレの方だった。洋平のことはなんでも知ってる気でいたけど、そうじゃなかったのかも。だからって別に、どうというわけでもないが、変な、落ち着かない気持ちになった。アメリカ留学の話は、すでに洋平にしておいた。真っ先に知らせてやったんだ。来年の夏には、オレは海の向こうだって。洋平は顔がくしゃくしゃになるくらい笑って「やったな!天才」と言った。嬉しそうな洋平を見てると、オレはますます自分が誇らしくなる。アメリカに行くと決まってから、洋平はオレが欲しがるままに「大丈夫」とか「お前ならやれるよ」とか、そんなことばかり言った。いつも、それが欲しかった。洋平にそう言われると、不思議と自信が湧くからだ。でも今回ばかりは、段々としっくりこなくなった。かといって、他になんて言ってほしいかもわからなかった。洋平はとうとう、最後の最後、ついさっき、空港に見送りにきたときまでそんな調子だった。オレを励ますような、安心させるような笑顔。オレはそれが、何故かすごく不満だった。オレが不満なことに、たぶん洋平も気付いてたけど、困ったように笑うだけだった。空の上で1人になってから、妙に頭の中がシンとしている。消灯時間になって、機内の照明が絞られたけど、大して体も動かしてないもんだから眠気はこない。たぶん……さみしいって言ってほしかった。オレがアメリカ行ったら、さみしいって。行くなって言ってくれたって、別に良かった。そうしたらオレは、しょうがねーな洋平クンはって、やっぱりオレがいないとさみしいか。そうだろう。アメリカなんてすぐだ、はやく会いに来いって言って、それから未来の話ができたんだ。オレは洋平と、そういう話がしたかった。機体の窓にうっすら反射して映った、自分の顔を見ていると、あの晩の洋平のことが頭をよぎった。青白い光の点滅の中、黙って泣いてた洋平。「さみしいって、一度でも口にしてしまったら」たしかそんなような歌だった。エンドロールで知らない歌手がそんなことを歌っていた。口にしてしまったら?続きは知らない。覚えてない。映画はつまらなかった。つまらない映画だった。何故か鼻の奥が熱くなって、涙が出てきた。青白く点滅するビデオの光の中で、なんでもないような顔で泣いてる洋平。違う、寂しいわけじゃない。オレはこっから始まる全部のことに、すげー興奮してんだ。なんでだよ。それからふと気がついた。たぶん洋平は、あの時にもう済ませてたんだ。あの時に…あの時から?あの辺りからもう。ほとんど確信だった。とっくに済ませてたんだ。オレが今、泣いてる分、洋平はもう済ませてたんだ。勝手に、ずいぶん前から、ずいぶん時間をかけて、1人で済ませてたんだ。こんなときまで、なんて段取りのいいヤツなんだろう。バカじゃねーのか。青白く点滅するビデオの光。去年の冬の光。長袖を引っ張って顔を拭った、ずっと前の洋平。ムカつく。今すぐこの機体を飛び降りてアイツを殴ってやりたい。今すぐ。ズボンの裾をぎゅっと握って、その衝動をやり過ごすしかなかった。アメリカへの、バスケへの、燃えるような期待も不安も、今だけは消し飛んでしまったようだった。ただ寂しくてたまらなかった。…………………………………この後付き合って添い遂げるとも知らず、センチメンタルしてる無自覚?の2人。畳む favorite 見にきてくれてありがとう! 二次創作 2024/09/19(Thu) 12:28:50
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口にはできない
「なんだよ、こんな終わり方」
「つまらんかったな」
オレはこういう話は好きじゃない。流行ってるからって観たけど、こんなに後味の悪い話だとは思わなかった。ラブストーリーってのは、こうじゃいかん。もっと、ドキドキして、キラキラして、幸せな気持ちになるようなのじゃないと。
洋平からの返事はなかった。洋平はまだエンドロールを眺めていた。テレビの画面がビカビカ不規則に反射して、洋平の顔を青白く照らしていた。頬を流れる水が少し光っていた。洋平は泣いていた。全然、なんでもないみたいな顔で、黙って泣いてた。
洋平、泣いてる。
オレはそのとき、なんだか動けなかった。
「確かにつまんなかった。ありきたりすぎ」
洋平がやっとこっちを向いて、眠そうに笑った。じっと見ていたら、洋平は長袖を引っ張って適当に涙を拭った。
「洋平、なんで泣いてんだ」
洋平はすぐに返事をしなかった。
「カンドーした…?」
全然、あくびって感じじゃなかった。
「いや、つまんなかったって。でもこの曲はいいな」
洋平はそう言いながら、横目でこっちを見て笑った。
「ま〜花道には早かったかもね」
馬鹿にされているのはわかったから、一回頭突きはしておいたが、それ以上何か言う気にもなれなかった。
その晩、オレは中々寝つけなかった。こんなに長く一緒にいるのに、洋平がこんなふうに、本当に泣いてるところを今まで見たことがなかった。そのことに初めて気がついたからだ。センチメンタルをやるのはいつだって、オレの方だった。
洋平のことはなんでも知ってる気でいたけど、そうじゃなかったのかも。だからって別に、どうというわけでもないが、変な、落ち着かない気持ちになった。
アメリカ留学の話は、すでに洋平にしておいた。真っ先に知らせてやったんだ。来年の夏には、オレは海の向こうだって。洋平は顔がくしゃくしゃになるくらい笑って「やったな!天才」と言った。嬉しそうな洋平を見てると、オレはますます自分が誇らしくなる。
アメリカに行くと決まってから、洋平はオレが欲しがるままに「大丈夫」とか「お前ならやれるよ」とか、そんなことばかり言った。いつも、それが欲しかった。洋平にそう言われると、不思議と自信が湧くからだ。でも今回ばかりは、段々としっくりこなくなった。かといって、他になんて言ってほしいかもわからなかった。洋平はとうとう、最後の最後、ついさっき、空港に見送りにきたときまでそんな調子だった。オレを励ますような、安心させるような笑顔。オレはそれが、何故かすごく不満だった。オレが不満なことに、たぶん洋平も気付いてたけど、困ったように笑うだけだった。
空の上で1人になってから、妙に頭の中がシンとしている。消灯時間になって、機内の照明が絞られたけど、大して体も動かしてないもんだから眠気はこない。
たぶん……さみしいって言ってほしかった。オレがアメリカ行ったら、さみしいって。行くなって言ってくれたって、別に良かった。そうしたらオレは、しょうがねーな洋平クンはって、やっぱりオレがいないとさみしいか。そうだろう。アメリカなんてすぐだ、はやく会いに来いって言って、それから未来の話ができたんだ。オレは洋平と、そういう話がしたかった。
機体の窓にうっすら反射して映った、自分の顔を見ていると、あの晩の洋平のことが頭をよぎった。青白い光の点滅の中、黙って泣いてた洋平。
「さみしいって、一度でも口にしてしまったら」
たしかそんなような歌だった。エンドロールで知らない歌手がそんなことを歌っていた。口にしてしまったら?続きは知らない。覚えてない。映画はつまらなかった。つまらない映画だった。
何故か鼻の奥が熱くなって、涙が出てきた。青白く点滅するビデオの光の中で、なんでもないような顔で泣いてる洋平。
違う、寂しいわけじゃない。オレはこっから始まる全部のことに、すげー興奮してんだ。なんでだよ。
それからふと気がついた。たぶん洋平は、あの時にもう済ませてたんだ。あの時に…あの時から?あの辺りからもう。
ほとんど確信だった。とっくに済ませてたんだ。オレが今、泣いてる分、洋平はもう済ませてたんだ。勝手に、ずいぶん前から、ずいぶん時間をかけて、1人で済ませてたんだ。こんなときまで、なんて段取りのいいヤツなんだろう。バカじゃねーのか。
青白く点滅するビデオの光。去年の冬の光。長袖を引っ張って顔を拭った、ずっと前の洋平。
ムカつく。今すぐこの機体を飛び降りてアイツを殴ってやりたい。今すぐ。
ズボンの裾をぎゅっと握って、その衝動をやり過ごすしかなかった。アメリカへの、バスケへの、燃えるような期待も不安も、今だけは消し飛んでしまったようだった。ただ寂しくてたまらなかった。
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この後付き合って添い遂げるとも知らず、センチメンタルしてる無自覚?の2人。畳む